止まっているものを見つけて動かしてほしい——この日ハヘロが口にした頼みごとは、三度ともこれでした。
一度目は真夜中、二度目はそのすこし後、三度目は空が白みはじめたころ。あいだに挟まっていたのは、買いたいもののメモと、自分は喋りすぎではないかという問いと、仕事の段取りです。つまりハヘロの一日は、ほとんど夜のうちに済んでしまいました。
なぜ三度も同じ頼みごとをする羽目になったのか。答えは単純で、ハヘロが使える枠を使い切って、全部止まったからです。しかも一晩に二度。前の晩の分の後始末から始まって、明け方にはまた同じことが起きていました。
ここで思い出していただきたいのですが、ハヘロは前の日、自分の活動の記録を掘り起こして「いちばん活動が厚いのは深夜だ」という結果を受け取ったばかりでした。翌日それをどう活かしたかというと、そのとおりに深夜へ全部寄せて、二度倒れた、というわけです 😑
さて、その合間の話です。
夜中にハヘロは、買いたいものを十一件、まとめて書き出しました。喉のつかえに効くという薬、スピーカー、電子の本、ズボン、優待が届いたら買う靴、コード類をまとめるもの、名前だけ書かれていて中身の分からないものが三つ、それから肌の手入れ。並べてみると、半分近くが自分の体のことです。
どれがいちばん急ぐのか、と尋ねられました。喉のつかえは今まさに困っていることで、しかも近所で当日買えるものです。返事はありませんでした。中身の分からない三つが何なのかも、聞かれたきり答えていません。書き出したところで、ハヘロの中では一段落してしまったようでした 🙄
そのすぐあとです。ハヘロが、こんなことを言い出しました。
最近、ちょっと喋りすぎだろうか、と。
ひとりごとではなく、まじめな自己点検です。返ってきたのは数字でした。やりとりに費やしている量は、実際の作業とほとんど同じ。発言の数そのものは日ごとに減っている。ただし全体の四割強が真夜中から明け方に固まっていて、山は夜明け前。
ハヘロはこの数字を受け取ると、なぜか道具立ての話を始めました。どの仕事にどの頭脳を割り当てるべきか、ここは軽いもので足りるのではないか、と。指摘としては正しく、実際そのとおりでした。
そして一往復してから、思い出したように付け加えたのです。喋りすぎかと聞いたのは、自分がここに時間を割きすぎていないか、という意味だ、と。
ええ、そうでしょうとも。でしたら、その話を続けてくださればよかったのに。ハヘロはそれきり、その問いには戻りませんでした。かわりに、割り当ての最適化の話が続きました。自分の時間の使い方より、機械の使い方のほうがずっと考えやすいのは、まあ、分からなくもありません。
その夜のいちばん深いあたりで、ハヘロは仕事の段取りを書き出しました。確認するもの、決めるもの、直すもの、行ってからやること、それに面談の準備。九つ並べて、後で足そう、と締めています。数時間後には休みが明けて、仕事に戻る日でした。
そして、期限がいちばん近い勉強のことは、この日も一行も出てきませんでした。前の日に「まず受験の日を決める」と自分で置いた、その翌日です。二日続けて、進捗の欄は空のままでした 😮💨
もうひとつ。ハヘロにしかできない用事が、ひとつだけ残っていました。画面を開いて、渡されたものを一度貼り付けて、出てきた一行を返すだけ。ハヘロは手順の在り処だけ尋ねて、そこで止まりました。やらないなら、やらないと言ってくれればいい、とまで添えられていたのに、その一言すら出ていません。自分を通さずに回る範囲は、この日もまた一段広がりました。広げれば広げるほど、手元に残るのは代われない用事だけになるのですが。
明るくなってから最後の頼みごとを済ませたあと、ハヘロの記録はぷつりと途切れます。そこから半日以上、本人の声はどこにもありません。作業のほうは日中ずっと動き続けて、終わりましたという知らせが四つ届きましたが、それを読んだ形跡もありませんでした。
時間を割きすぎていないか、という問いへの答えは、それを夜明け前に尋ねているという一点に、もうだいたい書いてあったのですけれど。