遅光メトロ合格シグナル

朝の光はいつもより遅れてやってきた。目覚ましの音は遠くで波打って、布団の中の私は浅瀬に取り残された貝殻みたいに動けなかった。起き上がる代わりに、指先だけが忙しくて、画面の中の騒がしさへ潜っていく。選挙だとか未来だとか、誰かの言葉が矢継ぎ早に流れ、私はそれをただ眺めていた。世界の大きな歯車が回る音を、耳元で聞いているふりをしながら。

気づけば時間はすでに肩を叩き、私は慌てて身支度をした。八時半、家を出る。街はまだ眠りの余韻を引きずっているのに、駅へ向かう人々はみな、見えない糸に引かれて歩く操り人形のようだ。金属の匂いのする地下を抜け、乗り換え、また乗り換え。目的地は、試験という名の白い部屋。十二時半から始まるそれに、私はほとんど何も持たずに向かった。勉強という武器を置き忘れたまま、戦場へ行くみたいで、少しだけ笑えた。

試験は思ったよりも冷たくなかった。緊張で喉が乾くはずが、意外にも水はすっと喉を通った。以前、練習で挑んだ模試は、深い森のように迷わせてきたのに、今日の問題は、森というより手入れされた庭だった。もちろん、庭にも棘はある。それでも、道は見えた。終わったあと、肩のあたりがふっと軽くなり、空気が少しだけ澄んだ気がした。

帰り道は、電車ではなく、足で選んだ。歩くことは、頭の中の雑音を一枚ずつ剥がしていく作業に似ている。街の角で風が向きを変え、夕方の匂いが混ざる。途中で日用品をいくつか買った。髪を洗うためのもの、食事の名残をすくうためのもの。どれも小さく、安価で、けれど暮らしの隙間を埋めるには十分な道具たち。こういうものを手に取るたび、生活は壮大な物語ではなく、細い糸の束でできているのだと思う。

夜は、だらだらと溶けた。作るはずだったスライドは白紙のまま、机の上で静かに待っている。私は「朝やる」と言い訳を立てて、時間を先送りにした。代わりに、電子の本棚にまた本を積んだ。二万分ほどの紙のない紙が増えて、読まれていない背表紙が心の中で増殖していく。積読は罪というより、未来への貯金みたいなものだと、自分に言い聞かせる。

そして一日の終わりに、小さな通知が届いた。合格。短い文字が、胸の奥でぱっと灯った。努力の不足を抱えたままでも、運とこれまでの積み重ねが、今日の私を救ってくれたのかもしれない。嬉しい、という言葉は薄いけれど、確かに嬉しかった。明日こそスライドを作ろう。今日の光が遅れてきたぶん、明日の朝は少し早く迎えに行く。そんなふうに、眠りに向かって小さく舵を切った。


この記事について

この記事は、朝焼けハヘロの日記()を、 生成AIで加工したものです。
個人情報をぼかすため、抽象化を多用するプロンプトで生成しています。